• きづきあきら+サトウナンキ『メイド諸君!』2巻
    • きづきあきらのマンガを読む人はある種の「毒」を期待しているというか、おはぎの中の針を望んでいるようなもんですが、今作はそういう悪意が控えめな印象。まあ今までの作品イメージが悪意丸出しだったからなんだが、会話もダークな発言は目立たない程度で、ほのぼのしてます。従順純情な百合っ子が苦境に立たされるなどキャラや展開は『ヨイコノミライ!』とそんなに変わってないけど、絵柄はやはり進歩がないように見える割には可愛く感じられた。トゲのある言い方だと、デフォルメで大胆に手を抜くコツを憶えたような。おっぱいおっぱい。しかし背景のCGダサさは少しつらいのでアシスタント増やしてください。

どうでもいいが仏語店名についての描き下ろしはシャレが利いてて、『モン・スール』のタイトル間違い(所有格と名詞の性不一致)も案外確信的なのかしらと思った。

  • 佐藤亜紀『バルタザールの遍歴』
    • 文春文庫。岩波の『ウィーン世紀末文学選』にでも載ってそうな雰囲気でした。というか、岩波のよりもずっと「ウィーン・退廃・聖鬼魔ll」というキーワードがしっくりくる。二重人格のような双子が自らの辿った数奇な運命を淡々と語るのはじわじわ臨場感があり、ロマンありハラハラあり痛快ありで、どちらかといえば硬い文体でも心地よく読ませる。ただ良くも悪くもウィーンな空気が色濃く出ていて、終わり方の素っ気無さも、それらしかったのがもの足りない気もしました。だがそれがいいというのも正直な感想。格調があります。