• 武田日向『狐とアトリ -武田日向短編集-』
    • 現在はエイジPureの実力派というか、和少ない良心のような武田先生の短編集。とにかく「狐とアトリ」が単行本収録されて嬉しい。これは05年に自分が読んだマンガの中で五本の指に入る傑作です。アトリの額を撫でながら語りかける姉上の仕草が憎い演出。続く「ドールズ・ガール」も出色の短編。全体を通して、十二分な画力で描かれる背景と小道具のリアリティが際立って、非常に美しい物語世界を作り出してます。社の鳥居が、人形の洋服が、紅茶のポットまでが作者の愛情を注がれており、ページをめくりながら思わず見とれてしまう。ストーリーがただでさえ強く感情に訴えかけるタイプなのに、この絵の上手さはズルい・・・というレベルの出来です。必読。しかし単行本で通して読むと、作者が一番心をこめてるのはまさに可愛い洋服や動物を緻密に描くことで、話としてそれ以上のものは特に興味が無いのかなという気もしました。やや萌え記号寄りで陰鬱さを取っ払った『Under the Rose』の船戸先生というのが近いでしょうか。

付け加えてイメージ台無しにしとくと、「ドールズ・ガール」はフィギュア萌え族(死語)が病院で出会った活発な子に影響を受けてひきこもりから脱出する話です。