• 相川有『WIZARDS NATION』1巻
    • バーズにこの人アリ、の実力派相川先生の幻冬舎刊第3作。日本の国土の呪力を集めた宝、「ゆきどけ」は国家機密として厳重に保管されてきたが、ある日1人の男の手によってその力が解放されてしまう。保管場所であった東京郊外の芦原市は放出された力によって「汚染」され、その影響は市内に住む少年達に表れることとなった。それぞれ体に漢数字の痣と、超能力を持つという形で(てんてんてん)! という話。
    • 話の舞台となる市は被害を抑えるために政府によって封鎖され、まあはやい話が萌え萌え閉鎖空間での少年能力バトルなミステリーというやつです。1巻で登場人物も10人以上出てきてるのでファンとしてはスケールでかそうという期待が否が応にも高まりますが、いくら相川先生が実力派とはいえ、ちょっと危なっかしい気がしないでも・・・というか今のところ特にナイスな手書き文字に代表される相川先生の持ち味が薄い。なんだか上遠野先生のソウルドロップとかメイズプリズンとかアスピリンスノーとかのマンガを読んでるような変な気分になりました。勿論それにはバーズでコミカライズやってる秋吉風鈴が相川先生のアシだからという先入観もありますけど。
  • 鈴木ツタ『3軒隣の遠い人』
    • 3軒隣の年上の幼馴染と10年ぶりに再会したが・・・? という話。素養のある方ならば、主人公が昔その幼馴染と若さゆえの性的にイケないことをして別れ、お互い立派な社会人になってからもその過去を引きずっていて云々などということはいちいち述べなくてもお分かりいただけることでせう。このマンガではオプションとしてブラコンな兄貴(幼馴染と同年)や職場の世渡りベタな天然先輩が出てきますよ。
    • むしろ鈴木ツタのマンガだと大体脇役の方に作者の萌えが発揮されてて、読んでてメインルートじゃなくて横道の方を攻略したくなるような感じ。『この世異聞』でも初老の可愛い館長の方が印象強いしなあ。BLゲーのキャラデザでもさせてみたら・・・。処女単行本の『hand which』には及びませんが、多忙のためか絵柄も荒れていてパッとしない最近のツタ先生の仕事の中では、良い部類に入るマンガだと思います。主人公の屈折した心情がリアリティを持っていてよかった。
  • イシノアヤ『君に沈む』
    • basso大先生を除けば、黒娜さかきに続き2人目となる茜新社EDGE COMIXレーベル。雑誌「OPERA」の前身である「季刊EDGE」の頃から発表をしていたイシノアヤの初単行本になります。硬く無機質な筆致で「新スタイリッシュボーイズラブコミック」に沿った、サブカル臭溢れるマンガです。アクの強い絵柄でもストーリーマンガではちゃんとコミカルで可愛らしい表情も描けてていいなと思って読んだのだけれど、作者後書きを見るにどうも “表BL” として割り切ってたようで・・・別にストーリー性が強い方が弱いものよりも優れた作品だとは言わないけど、意識的にアンチストーリーで描いていくのってあんまり未来が無いように思える。少なくとも「OPERA」は才能のある人が揃っているのだから、そんな素晴らしい強硬路線で可能性を潰さないでね。