• 吉野阿貴 『シューカツ!!〜キミに内定〜』1巻(フラワーコミックス) 
    • 世渡り下手で不器用な大学4年生のヒロインが就職活動先の東京で出会ったのは、いかにもヤリ手な自信家の青年。歯が立たないくらいデキる男に若干のコンプレックスを憶えながらも気になりつつ、京都に戻ってきた彼女は大学のキャンパスで彼と再会するが・・・ これって運命? というお話。サブタイトルがかなりイカしてますね。
    • ただ、君を愛してる』のコミカライズで初単行本というお披露目はどうみても勿体無い人でしたが、今回のオリジナル3つ目の初連載作は鳴り物入りにしても恥じない、プチコミ恋愛マンガの魅力がぎっしりつまった良作でした。美味しいマンガ家になったなあ。元々綺麗だった絵は適度に力が抜けてキャラクターは親しみやすく、欠点だった「眼力の強すぎる瞳」も目立たなくなってきて素晴らしい。彼氏がここまで正論を貫く万能人間だと読んでいて惚れるというよりムカつくけれど、まあ吉野阿貴の描く男性はいつも理想の王子様で小動物系ヒロインの甘えを厳しく叱責してくれるタイプだもんね・・・。 それと、ラブホでお泊りの展開の際に彼氏が上半身裸になってくれて良かったです。この絵柄でサービスカットを描かないのは持ち腐れってもんです。強力な新人、と呼ぶのがぴったりの作者。
  • きづきあきら+サトウナンキ 『まんまんちゃん、あん。』1巻(バーズコミックス)
    • 清貧で育ったヒロインがふとしたことから寺に嫁ぎ、後継問題を中心とした生臭い世界に巻き込まれたり夫の弟がよろめいたりする、意外と俗っぽい話。タイトルだけ見たときは子育てのマンガかと思っていました。
    • ようやくきづきあきらの(変更後の)絵柄で巨乳女子高生が健康的に可愛く見えるようになった。とても喜ばしい。でもマンガの描き方がどんどん良くなっている一方で、ストーリーの方はいつもより散漫な印象を受けました。最初、とくに出だしを読むと性と恋愛観の健全な理解の欠けた主人公が寺という俗世に最も遠くて近い仏教世界で触れるあれこれという話かなあと思ったんですが、そんなことないですね。というかありそうな気もするけど、後継を巡る檀家の政治と和尚弟子達のゆれる思い、それまでの家族との付き合い、現代の仏教社会の構造問題みたいなことまであちこちに手を広げていて追いきれない。正確には今までもそうした分かりにくさはあったけれど、今作は1つはっきりした歪みや悪意が通っていないのでどこが主眼なのかよく分からないって感じでした。

どうでもいいが「啐啄同時」のルビが「てったくどうじ」なのは本当に正しいんだろうか。