単行本の感想書くの久しぶりなもんで、レーベルをどう表記してたか忘れてた。

  • 一井かずみ『さあ 秘密をはじめよう』1巻(小学館 フラワーコミックスアルファ)
    • 社内恋愛禁止の会社で、敏腕エリート社員から高圧的な告白を受けたOLの話。良くも悪くも素朴なヒロインに対して、彼氏(※ただし勿論のことながらイケメン)がきつい性格なのが最近のプチコミの美しい定石です。吉野阿貴が描くと、ヒロイン自身が正論で論破叱責されまくり、読んでる側は非常にイライラするか、それを乗り越えて快感を覚える。一方で一井先生だと、彼氏は基本的にデレていてヒロインには弱く、その厳しい態度の矢面に立つのは主に取り巻きのOL衆。社内で孤立していく彼氏のとばっちりを受け、ヒロインもOL仲間との関係不全に気を揉むのが基本的な展開。で、そういうストレスをどちらかが思い切って断ち切ることで恋愛関係が社内で発覚して、エリートと凡OLの身分差恋愛が勢いに乗って見事に成就しました、と3,4話でまとまっておしまいにするのが大まかなパターン。
    • ・・・かどうかは知らんが、一井かずみの既刊7冊って全て単巻なんですよね。本作はデビュー10年目にして初の巻数付き単行本です。単行本でも述べているように、元々は3話で終了の予定だったところを、帯曰く「あまりの人気に長期連載化」したというもの。第3話で社内恋愛禁止が強調されることで、簡単なハッピーエンドが出来なくなって連載終了が遠のくという構造が見えます。見える気がします。ヒロインにデレるあまり、社内で恋愛を隠し通すのがストレスでヒロインにちょっかいを出すという、彼氏のわんこっぷりが新しかったのかな。はじめての長期連載ということで、今までのある種お決まりな展開をどう乗り越えていくのかが楽しみです。まあ、バレたら男子は転勤・女子は退職勧告という厳しいお約束があるのに、相手を巻き込んで社内恋愛しようなんて、なんつー迷惑自分勝手というか惚れた弱みというか・・・という気もするけど。
    • 3作前の『ラブ/ジョブ』が多分作者の好きな題材で、単行本にまとまった後も何度か後日談を描くほど後ろ髪を引かれていたことを思うと、このタイミングで長期連載をやらせるのは遅えよ、本当にこれって長々とこねくり回すだけの思い入れがあるのかな? といらぬ心配がしたくなる。でも、風呂敷をあまり広げずに描いてしまうタイプで、かといって短編巧者とまではいかない立ち位置だった一井先生が、この作品でうまく化けられればいいなと思います。