Y: The Last Man VOL 01: Unmanned (Y the Last Man)

Y: The Last Man VOL 01: Unmanned (Y the Last Man)

    • あらすじ:ある日突然、地球上からY染色体(Y chromosome)を持つ生物、つまり男性・雄の動物が同時に死滅した。街には死体が溢れ、構成員の大部分が男性であった政府と軍は崩壊する。この異常事態を神の意思と考える者、精子バンクを襲撃する"amazons"という過激派集団、共和党政権の樹立を目論む議員夫人たち・・・世界は混乱に陥る。そんな中、何故か審判を免れた無職ひきこもり系主人公Yorickと彼が世話をしていたサルのAmpersandの1人と1匹。母親のいるホワイトハウスを訪れたYorickは、人類に残された暫定最後の男性として、クローン技術の実践者である遺伝子工学者のDr.Mannと会う指名をアメリカ初の女性大統領から受ける。かくしてYorick, Ampersandとその護衛を任された、政府諜報組織Culper Ringの女性エージェント・355の旅が始まった。果たして世界はどうなるのか? そしてYorickはオーストラリアにいる恋人のBethと再会できるのか? という60話10巻に及ぶSF大作。2011年に映画化予定。出版社のページから第1話がダウンロード可能(Download Issue #1)。
    • ただ1人の男になっちゃっても、僕には心に決めた人がいるから貞操は守る。ベスには電話でプロポーズもしたんだ、僕は彼女がOKしてくれると信じている。僕を狙う奴らがいるなら、アメリカよりもオーストラリアに逃げた方がスマートな筈だ。「古典的」な方法で子孫を残すことが結局ベストなんじゃないかな(キリッ そんな楽天家でちょっと目立ちたがりのヨリック君が、堅物のエージェントと反発しながら荒廃した世界で恋人を求めてさすらうストーリーです。1巻ではペシミストなドクターと無事合流したところで終わり、3人+1匹の道中記として続くのかな? 絵柄は目を引くようなものではないものの、構成・演出などのマンガ表現は結構凝っていて飽きさせない。人気があるのも頷ける。「男性のいなくなった世界」に関して、1巻では主に社会情勢の観点から描いている。逆に言うとバイオSF臭はそんなに出ていなくて、他の哺乳類はどうなるの? といったところは2巻以降で描かれていくのだろう。ただ、これ全10冊なんだよな・・・全部揃えると1万円越すわけで、ボリューム的には日本の単行本で7,8冊だし、読む時間も考えるとちょっと決心がつかない。3冊くらいで終わってれば揃える気にもなるんだけど。グラフィックノベルの趣味って安くないなあ。

Punisher

Punisher

    • 内容と関係ない話:アメコミのプロダクト・チームにはWriter(原作者に相当)、Penciller(鉛筆下書きに相当)、Inker(下書き画をインク原画にするフィニッシャー相当)、Letterer(タイトルロゴ・フキダシ・効果音等を加える文字デザイナー相当)、Colorist(彩色担当)が存在します。効果音の彩色はLettererとColoristのどっちがやるの?といった詳しい工程順序はWikipediaで読んでもよく分からなかった。この作品については Artist = Penciller + Inker ということらしい。フィニッシャーであるInkerはただ下書き線をなぞるわけではなく、Pencillerの絵を生かすも殺すもInkerの腕次第だ・・・とか書かれているので、2つの作業を1人でやっているのはよいことかもしれない。
    • あらすじ:いつもの社会のゴミ駆除を終えて愛車に戻ったパニッシャーさんは、何者かの罠にハマり毒物を打たれる。「6時間後にお前は死ぬ。しかしこの標的の殺害を実行してくれれば解毒剤をやろう。おっと、私を殺すと解毒剤は手に入らないぞ」シンプルな幕開け。解毒剤?殺害依頼?でもそんなの関係ねえ! パニッシャーさんはいつだって死を覚悟して汚物消毒に励んできた。今回はその日時が分かったってだけの話だろ? 依頼者を躊躇なく殺したパニッシャーさんは、残された時間でここフィラデルフィアの街を出来る限り浄化することを決意するのであった。同時収録の"Force of Nature"では海上で犯罪者たちを極限状況にじわじわ追い詰めていく描写が見所。
    • Writerのドゥエイン・スウィアジンスキーはクライム・ノベルの作者として知られ、ハヤカワの『メアリー・ケイト』『解雇手当』が日本では読める。無造作に人を殺したり、身の回りの道具で工夫して人を殺したり、銃や毒薬やワイヤーでとにかく人を殺したりする手際に定評がある作家だ。というわけで、社会のゴミ共の処刑者たるパニッシャーのストーリーを手がけるのは非常に順当なところだろう。ちなみに舞台がフィラデルフィアなのは作者の趣味。
    • 前述のハヤカワの小説2作がそこそこ面白かったので、作者がコミック原作も手がけていると知って買ってみた。主人公が窮地に追い詰められながら悪者に迫っていくスリル満点の展開や、殺しのクールな手口、頻出するスラングなどは健在。ただ尺が短い分、多視点にまたがる構成は小説ほど機能していない。傷だらけになりながら奮闘するマッチョなおっさんを魅せるという点では、(恐らく)これまでのPunisherシリーズに比肩する高い質を維持している。結局のところその手の筋肉ヒーローマニアか、スウィアジンスキーの小説にハマッた人以外には薦めづらいね。