2012年のマンガランキングはこんな感じでした。


1 久嘉めいら「優等生の遊び方」
2 小山鹿梨子「校舎のうらには天使が埋められている」
3 香魚子「もう卵は殺さない」
4 相田裕GUNSLINGER GIRL
5 梶本レイカ「高3限定」
6 吉もと誠「ウソツキ!ゴクオーくん」
7 卯月妙子人間仮免中
8 田中ほさな「時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。」
9 ダ・ヴィンチ・恐山「くーろんず」
10 ブノワ・ペーターズ=作、フランソワ・スクイテン=画 古永真一・原正人=訳「闇の国々
11 マルク=アントワーヌ・マチュー 原正人 訳「3秒」
12 神奈アズミ 原作/クレア・ウィリアムズ「レイン候爵と薔薇の館」
13 阿部共実空が灰色だから
14 西野マルタ「五大湖フルバースト」
15 アルコ×河原和音俺物語!!
16 竹内友ボールルームへようこそ
17 天望良一「亡国のジークフリート
18 緑のルーペ 原作協力:フジワラキリヲ「ブラパ THE BLACK PARADE」
19 サトーユキエ「愛しの可愛い子ちゃん」
20 古味直志ニセコイ
21 鶴淵けんじ「meth・e・meth」
22 天堂きりん「きみが心に棲みついた」
23 ライフスタイル角田「なんとかやってます。」
24 松島直子「すみれファンファーレ」
25 松井信介「あなたのそばに」
26 木村リノ「あじさいタウン」
27 宮崎夏次系「変身のニュース」
28 田仲みのる「ロケット☆ガール -Rock it GiRL!!-」
29 原作:戸塚たすく 作画:阿久井真「ゼクレアトル〜神マンガ戦記〜」
30 原作:ONE 漫画:村田雄介ワンパンマン



ランキングの中身はさておき、忘れないうちに2012年のマンガで言及しておきたいものに言及します。


別冊マーガレット増刊「bianca」は2012年のコミック誌の中でも群を抜いて優秀な雑誌で、特に別マが擁する新人作家の弾数に驚かされました。同じ集英社でもYJ増刊のアオハルが創作同人作家のアンソロ誌になってしまうのと比べると、女性・少女向けと青年・少年向けの体力差を認めないわけにはいきません。短編集である「もう卵は殺さない」では、表題作がbiancaの巻末に掲載されました。悩めるマンガ家を助けるゴーストライター・プロット作成代行業者と、そこでお蔵入りになっている作品が主人公(いわば擬人化)です。作中では作品同士が売れる設定・売れない話の議論を始め、またマンガ家を挫折したゴーストライターの再挑戦が描かれます。物語は作者が暖め、作品として世に出すことで孵化して作者の手を離れていく。「もう卵を殺さない」とはそうした物語創作を肯定していくことであり、ひいては作り手であるマンガ家たちの成長の芽を摘まない、という主張に通ずる非常にメタ的な作品です。自前の新人作家多数で構成されたbiancaにおいて、この作品が掲載されたというのは、なかなか意義深いことだったのではないでしょうか。


講談社では「戦闘破壊学園ダンゲロス」横田卓馬ことYOKO、集英社では「ワンパンマン」のONE、小学館では「ヒト喰イ」のMITAなど、2012年は各社で新都社作家のお披露目が行われた年でした。ウェブコミック作家の商業デビュー自体は今更珍しいものではないですが、新都社に大手出版社が大々的に手を付けたのははじめてでしょう。元々プロ指向だった横田卓馬はさておき、素人上等・ヘタウマ御免で、商業コミックとはある意味方向性が真逆の作品群が単行本化するというのは、なかなか複雑な気分です。自前で新人が用意出来ない青年誌が新都社の人気作家をハンティングしていくのって正直末期なのかなーと。独自文化の醸成されたコミュニティからタダ取りするなら、新都社作家×自社作家での化学反応を新規作品に仕立てて欲しいと私は思います。ゼクレアトルはその要件を満たしている貴重な作品です。ワンパンマンも化学反応はあるのだが、集英社における村田雄介の扱いがあれでベストとは考えたくない……


新都社では「平穏世代の韋駄天達」が好きです。この人の作劇上手すぎるから、商業で原作担当しないかなーと思ったり。長門は俺先生のムリゲー艦蹴りも面白いですよね。


2012年のマンガベストワンです。以前紹介したので繰り返しになってしまいますが、繊細な線から紡がれる描写の力強さ、特に表情の気迫が新人離れしてます。中身は一見想像がつかない位にドロドロの愛憎病みっぷりですけど、悪堕ちして開き直りつつも、自らの罪に苛まれる登場人物たちはとても美しいです。「人間は確かにキレイじゃいられないけど/完全に醜くもなれない」いい言葉だ……。携帯配信のモバフラでこういうマンガが出てくるようになったというのは、媒体変化によるジャンル更改を予感させて興味深いです。ちょうど先日モバフラの配信、モバプレ1/10号で新作が出たんですが、そっちも面白かったっすわ。


転校して周りと馴染めないでいた私のはじめての友達は、クラスいちの美少女・蜂屋さん。蜂屋さんは引っ込み思案で仲間外れの私と遊んでくれます。周りから冷たい目で見られても、蜂屋さんは臆病な私のことをかばってくれて、私はその勇気に助けられてクラスの一員になれたのです。でもそれは、全て私をクラスの慰み者、「わんこ」に仕立てる、偽りの友情でした。
というわけで別冊フレンドの伝統芸・いじめマンガの最新形です。クラスを支配する最恐JSの蜂谷さんと、不屈の闘志でそのいじめに立ち向かう漆黒のヒロイン・光本さんの対決を中心に、小学校での残酷ないじめが繰り広げられます。転校生のクラス仲間入りや、野外学習で男子とプチ遭難といった、お決まりのハートウォーミングな少女マンガ展開が、凄惨ないじめの現場に引きずり込まれる救いのなさが秀逸。天使の微笑で同級生を絶望に突き落とす蜂屋さんの心無い発言にゾクゾクすること間違い無しです。


「人間にとって神とは何か?」という問いに少年成長的な答を出した快作。中二病のなんて安易なそしりを寄せ付けないがっぷり四つな姿勢、能力バトル展開から背後の大きな仕掛けに迫っていく作劇、最終巻のどんでん返しと爽やかなラストにしびれました。作中で示される「神の存在意義」もシビアな答えだけれど、読んだ後に少し胸を張りたくなる。


別冊コロコロコミック生まれの絶対裁判テイストな騙し合い推理漫画。地獄の閻魔大王の主人公が小学生となって、校内で起こる事件とそれにまつわるウソを舌先三寸で暴いていくストーリーです。コロコロのオリジナル良作は最近だと板垣雅也の「STAND UP!」や松本しげのぶの「錬人」等ですが、誌面を大きく占める長寿作品・ベテラン作家を押しのけるのは簡単ではない。そんな中、ゴクオーくんは自らのウソで悪人をやっつける痛快さが大ヒット。既にコロコロ本誌の看板作の一角を担うまでの人気っぷりで、各話完結連載の短いページ数に二転三転するウソ事件を組み立てる構成力も高く、大人が読んでも楽しめます。ヒロインの天子ちゃんが可愛いんだなこれが。


日に2回以上歯を磨かない→減点10。お前にモテる資格は無い。読んでいて心が折れました。このままでは藤井さんが恋愛落伍者に……絶対に許さない。それはともかく、漫画アクションでは「LOVE理論」(今月刊行予定)、週刊漫画TIMESでは「レンアイガク」と、監修者つきでのハウツー恋愛マンガがオヤジ誌に載ってたのも印象深いです。ちゃおで真己京子が「恋愛メンタリズム」を書いてるのも同じ流れを感じる。


コミックZERO-SUMの長期連載が、昨年完結しました。王族の暗殺事件から始まるこの物語は、ホクレアという先住民族との確執、建国史にまつわる暗部など重厚なスケールのファンタジーです。ライトなファンタジーは舞台設定とキャラクターの掘り下げバランスが結構難しいですが、本作は両者を高いレベルでまとめています。食糧事情や交易のあり様にまで気を配った緻密な世界観の下で、ゼロサムらしいキャラクターの魅力を前面に出すつくりになっているのは、一迅社の目指すファンタジー像を高いレベルで実現しているように思います。王道ファンタジーもマイナージャンルに位置する今日において、こういう骨太な作品をじっくり続けていくのも並大抵では無いと想像しますが、また一迅社の良質ファンタジー、読みたいですね(遠い目)



好きな作品の話はなかなか手短に出来ないっすね。