• シギサワカヤ『九月病』上巻
    • 同人の頃から読んでいたファンでもないのに言いきりますが、シギサワカヤというのは良くも悪くもオナニーなマンガを描く人です。良くも悪くもというのはつまり、『箱舟の行方』は見ている人を楽しませてくれるナイスなオナニーショウで、『九月病』は読んでいるこっちも消耗してしまうハードなオナニーです。少なくとも上巻は。伝えたいことをどこまで明言するか、描き手の生の心理をどうやって自然に作品にこめるか、という見せ方の問題であって、そのさじ加減1つが「良し悪し」につながっていると思います。ただ、それが作品の甲乙を決めるわけではなく、これは主な発表の場が商業か同人であるかの差がダイレクトに表れている部分であって本質的には同じです。見るべきは1年間で220ページも同人を描いた手腕とか、その勢いに任せるだけの情熱とか、その情熱のままにぐいぐい揺さぶってくる展開とか、もちろん作者固有のキレ味が惜しげもなく持て余し気味に表れてることとか、 要は同人の再録として大いに価値があるっていうか。こうしてみるとBELNE先生のワークショップというのは良いシステムなのだなあ。
    • 人物関係が錯綜した物語なのでなかなか把握しづらいですが、例によって(?)海老沢さんの立場に沿って描かれた「アイアンメイデン」とそれに続く描き下ろし部分は親しみやすく面白いです。この作者のキレ味を保ったまま商業にどう「落とし込むか」というのは非常にデリケートなところですが、白泉社には是非頑張ってほしいですね。下巻はまだ買ってませんが・・・

「ヴァーチャル・レッド」はまた少し違ったっけ。こっちも単行本化するといいよね。