• 西村拓 原作奥田英朗 『家日和』(集英社 オフィスユーコミックス)
    • 夫と妻が自分とお互いを見つめなおす共通の場所、それが家。夫婦家庭のあり方をいろいろな角度から描いたユーモア連作集です。原作の直木賞作家については全然知りませんが、マンガでは話のツボが明快で分かりやすかったです。ただ男女の役割分担についてはっきり描いているので、(役割分担=性役割とはまた別に)ある種の古臭さというか抵抗感もありました。オフィスユーでこの内容を連載していたというのが一番興味深いかも。
    • 西村拓はこれが初単行本ですが、アシ経験の他にイラストレーターのキャリアが長い人だったんじゃないかと思いました。そのくらい個性的、もっと言うと企業広告の1ページマンガのような万人向けの絵柄で、やけに背景と小道具に気合入っているのが不思議でした。奥付にある作画スタッフも12人いるので一概に言えないけど。別にけなしている訳ではなく、読みなれたマンガとはズレていて簡単な表情にも変な味がにじんでいるのが、独特で面白かったです。第1話の扉カラーの青い色使い(青山だけに?)がかなり目を惹いたので、再現してほしかった。次号のオフィスユーで原作無しの読み切りを載せるみたいなので、どうなるか楽しみ。
  • 環方このみ 『干支☆えとせとら』(小学館 ちゃおコミックス)
    • 好きな子と両思いになれるようにと絵馬に願掛けをしたら、干支の神様たちが家にやってきて、ネズミからイノシシまでにぎやかになっちゃった、というお話。
    • 犬の話→りなちゃ読者大喜び ...then, 動物がいっぱい→幼女狂喜 かと思ったら大間違いだ! ある日あなたに十二匹の可愛い動物達が…のシスプリでりなちゃにもエロゲー的アプローチの可能性を見せてくれたと言えるかも知れない。この作者に動物を描くなという方が無茶だけど、十二支で三話集中連載はちょっと無理があった。環方このみの絵も少女誌の中ではかなり美少女系と親和性が高いタイプなのでこうして買って読んでいるが、マンガとしてはもう少し画面に動きとメリハリを出してほしいところ。巻末読者コーナー的なマスコットと化して完結したキャラクターのせいか、目に優しすぎるというか。絵単体で見るととても良いんだが。でも同時収録の「レンズごしのホント」の犬が可愛すぎる(同級生をメガネごしに見ると犬の格好で怯えてる)ので全て許せる。はしごを上る途中で恐がる犬とか超上手いのでやっぱり犬を描いてください。過度にデフォルメせずに。
  • オノ・ナツメ 『オノ・ナツメ短編集 Tesoro』(小学館 IKKI COMICS)
    • 「MATE再販しろ」と言ってばかりですが、本当は商業で同人誌の再録単行本を出すくらいなら新しいのを描かせるのが筋じゃないかなあという気がしないでもない。再録はみんなの大多数にメリットがある話なので否定しても始まらないが、しかし・・・しかし、同人ペーパーといったって作者HPで公開している(いた)マンガまで収録してページ稼ぐってのはちょっと悲しい。IKKI必死だな、で笑えればいいのだが、ここまで来ると本当に弾が尽きてるんだなあというか。あ、HP公開は別として同じことは白泉社にも言いたいです。
    • 文句はこれくらいにして。オノ先生は頭身が小さい方が面白いと常々考えてるんですが、この単行本は頭身高いキャラでもイイもんだぜということを教えてくれて良かったです。過去作品が。ピエルルイジとか涙なくしては語れない(語れるほど読み込んでいない)。収録されてる刑務所の話(「THE WRONG DOG'S LIFE CHEST」)は自分がオノ・ナツメを好きになったきっかけなので、こうして単行本で読めるというのは感慨深いものがあります。10年前から先月分まで広いスパンなのに、綺麗にまとまっていて違和感無くどれも楽しめるのが凄い。改めてこの人の絵は大好きだと思いました。しかしこうして眺めていいなあいいなあとやっていると、ひょっとしてデビューせずに同人でstecca完結させていた方が以下略。

でもこの本でハマる人はきっとnove辺りが喉から手が出るほど欲しくなるのでやっぱ同人再録は難しいね。


てゆーか懐古じみてるのでアレですが南研一主催の「Parking!」は今引っ張り出しても追随許さぬ高レベルで超面白いのでそれこそ再結成して欲しい。