BEATLESS

BEATLESS

今更ながら長谷敏司の『BEATLESS』の感想。次世代に生き残るのは、力の強いものでも、知能の高いものでもない。変化に対応できる、言い換えれば外部の干渉に抗わず順応する、最もチョロいものが生き残るのだ。という話でした。人工知能は遅かれ早かれヒトの手を離れるのであり、やがては人類と別個の存在として立ち上がる。彼らから差し伸べられる手をためらいなく掴めるかどうかが未来への扉なのだ。こう書くとまさにディストピアだし実際そういう話なのだが、物語の基調は明るく、結末もやや違和感を覚えるくらいめでたい。それはチョロい主人公の楽観的な態度に由来するもので、全体として『BEATLESS』はチョロさに対する賛歌なのだ、と私は理解しました。


円環少女のセカンドヒロイン倉本きずなが「ご飯食べてよく寝れば全て上手くいく」みたいなことを言い出したり、ロリコン主人公の仁が「小学生の正ヒロインに苦労は背負わせない、とにかく俺が何とかする! どうにかなる!」とか力強く無根拠に願うように、長谷敏司には卑小なる実生活の営みとそこに根ざすポジティブで浅慮な未来予測に対する強い信頼があると思う。『BEATLESS』は最終的にその思想を是としている感じ。