……ああ そりゃあ たいそう悪い 冗談だ

このスタンスって最近?なんとなく流行ってる気がする。でもどこで見覚えがあるんだろう。と思いつつ『むしし』を読む。どの話をみても第一級の水準。よく出来てるなあ。全く大したクオリティです。とても優等生のマンガなんだが、ふと、漆原は実は絵がそんなにうまくない? と感じた。塗りは上手い。単行本の表紙はすいこまれるような美しさがあるし、そもそも下手ならそうそう何度も巻中カラーを描けないだろう。その反面、線画は決してうまくない。下手ではないが一般人のレベルでの上手さというか、人物はまだいいけど、山とかよく見ると全然描けてないんじゃないか?これ単独で見るとなんなのかさっぱりだ。最新巻の「山抱く衣」の羽裏の絵だって後の天才画家の習作というより、もやもや染みが出来てるようにしか見えないし、そう思うと全体としてトーンワークもいたって平凡だし、意外にもこの作品の風景、特に草木の描写は「絵心のある人の絵」くらいに見えてくる。・・・逆に云えばそのぎこちなさ・違和感を感じさせないのが作者の非凡さなのか? 面白いことに変わりはない、ということであって、それが『むしし』が凄いということに他ならないと改めて感じたということなんだが。えーと。息子のくしゃみや自分の腹の音にびびる母ちゃんが萌ですね。

それと製本がひどくて上から見ると乱杭歯のようになっていた。仕様か?250頁越すような厚い単行本だとたまにそういうのは見るけど。……単行本の製本所まで知るマニアになれと?講談社一社でもいくつかの製本所に発注してるみたいだけど、どういう区分で使い分けてるのかは少し興味があります。


ブックファーストでエッジコミックフェアがどうのというのをやっていて、エッジマンガ家の一覧区分みたいなのがポスターに記されていた。僕はそのなかのせいぜい半分しかまともに読んだことはないので笑い飛ばすのも少しムリなんだが、1つ云うならその一覧の中に、櫻井そうし、戸田誠二、伊藤まさや、内田雄駿、正木秀尚、竹下堅二郎、五十嵐大介羽央橋本ライカ長田裕幸大越孝太郎岡崎京子 が入っていて、これは全て河出の九龍コミックスで出た(出る予定の)マンガ家で、つまりは九龍コミックイコールエッジコミックであって河出はこれ以上ないってくらいエッジな出版社であると。いや戸田誠二は違ったね。あと橋本、大越、岡崎は河出とあまり関係ないかもしれない。竹下も単行本を出したわけではないし。けどまあ何が云いたいって、いくらなんでも売り込みすぎなんじゃないのと思った。いや伊藤まさやが出たら買うかもしれないです。あと前に行ったときと同様『リボーン』の単行本が山のように並べられていて、女性の方がそれを見て「凄い。こんな人気あったなんて、やだちょっと泣きそう」とか云ってた。そのマンガには陵辱がないので哭けません。


追記:マサムネ増刊がちょっと凄いらしいですね。ぶっちゃけあの薄い本、古本で買ってじっくり読んでやろうじゃないか、と思っていたがここ最近の話題具合の急増を見るにつけ今のうち叩けるとこしばいとかないとヤバいんじゃないの?という戦慄すら覚えるので、明日定価で買ってしまいそうな屈辱。